
実際問題として、ローカルの友人のなかでもかなりのヒトが、バブルであがったのを期に家を手放し、実家に出戻る現象が続出。今度は、新しく家庭を持つ澳門人が、住宅を手に入れられないと云う、本末転倒な事態となってしまっている。これは、中国、香港そしてローカルの玄人、素人を含めた投資家筋が、買い漁った断末魔的な現象である。
いま中国のバブルは、先進国では見たことがないほど膨らんでいる。たとえばイギリスのオークションでは、18世紀後半の清朝・乾隆帝時代に作られた花瓶を中国人同士で競り上げ、最終的に北京の富豪が約56億円で競り落とした。予想価格は約1億3000万円だったというから、43倍の高値が付いたわけである。バブル期の特徴として、チューリップならぬニンニク価格の暴騰なども観察されている。最大の問題は不動産バブルだ。北京、杭州、上海などのマンションは2億~8億円もする。一昨年、上海の浦東地区に高層マンションが立ち並ぶ高級住宅街を見に行ったが、何か寂しい感じがしたので、案内してくれた人に「この辺の住民はどうやって通勤しているんですか?」と尋ねた。すると「ここには誰も住んでいません」と言う。つまり、みんな投資用に買っているのだ。天津や大連をはじめとする地方都市でも、新築のマンションは、夜になっても全く灯りがついていない。これが全国至る所で見られる。
中国の中間層には、マンションを3戸持つ人が増えている。1戸目、2戸目の物件が値上がりしているので、それを抵当に入れて3戸目を買い始めているのだ。結果、いま中国には空き室が8000万戸もあると言われている。日本のバブル期に日本人が買っていた住宅の価格は、年収の10倍ぐらいだった。ところが中国では、かなり上級の管理職であっても年収100万~200万円で、2億円内外の物件を買っている。なんと年収の100倍以上。空恐ろしい状況なのである。中国に、まだ家を持っておらず、これから買いたいと思っている人が、山ほどいるのは確かである。だが、その人たちが家を買うためには、給料が上がっていかねばならない。これまでは政府が企業に年15%ずつ給料を上げさせてきたので、中国人はこの先も給料が上がると思っている。

中国政府は金融引き締めに政策転換したが、もはやソフトランディングはできないと思う。中央銀行の周小川総裁も金利を上げてインフレ退治をしたいと思ったら海外からドルキャリー(金利の低いドルを借りて利回りのよい国に投資する取引)が来て火に油を注ぐし、下げれば不動産投機が収まらない、どうすればよいのかとハムレットみたいな発言をしている。正直、打つ手がないと言っているに等しい。